気づいてしまった。この気持ちに…。
あなたはいつだって私を守ってくれる。
でも、それは…。


巫女と七星士


私は、婁宿、奎宿、昴宿と残りの七星士を探しに旅に出ていた。
「しかし暑いね〜」
昴宿が歩きながら呟いた。
今日は熱射病になるほどの暑さ。
私たちは近くにある湖でひと休憩をすることにした。
そこは緑がいっぱいの空気の良いところだった。
「ここの湖の水はおいしいんだよ」
「そう。じゃあ私も休んでくるね」
笑顔で言ってくれた婁宿に、私はそっけない態度をとって、婁宿から遠い所に向かって走った。

「鈴乃…」
婁宿はそんな鈴乃を見つめていた。

「なーにやってんのよ。あんたは!」
水を飲んで芝生に座っていると、昴宿が頭を叩きながら言った。
「…」
「最近、婁宿を避けまくってるじゃない」
「!」
さすが勘のいい昴宿。お見通しだ。
「…だってっ」
私は弱く言うと、指に長い三つ編みを絡ませた。

私がこのように婁宿にそっけない態度をとってしまうようになったのは、ちょうど1週間前のあのことがあってからだった。

婁宿、昴宿と共に西廊国の宮殿から離れた村に行った日
「本当にここに白虎七星士がいるのかしら」
しばらく歩いて不安になった私は呟いた。
周りは誰もいなくていなくて大地が広がっている所だった。やたら岩や石が多いという印象を受けた。
でも七星士を探す手がかりを示してある巻物を見るとここらへんのはずだ。
3人に疲れの色が見えはじめたその時だった。
「オメぇーか?白虎の巫女というのは」
前方を見ると白い髪で、耳に大きなリングをつけている少年がいた。
「あなたは…?」
「いやぁ〜、名乗るものでも…あるんだろうけどよ」
私がおそるおそる尋ねると、少年はいたずらっぽい笑みで言った。
なんなのこの人?と思った瞬間、少年は真顔になって言った。
「あいにく俺は、女の子に手を出すのは好きじゃないんだけどよ、巫女様のお手並み見せてもらうぜ!」
すると少年は姿を消した。
「何?」
「俺はここだよ」
声がする後ろを振り向くと、少年は近くにあった石を掴み、猛スピードでそれを飛ばしてきた。
「きゃーっ!!」
いきなりのことで状況が読めなかった私は、少年の力によって固い地面へ飛ばされた。
「鈴乃ー!!」
「あんたなんなの!?会った早々鈴乃を狙うなんて!」
昴宿は少年を睨みつけた。
婁宿は自分の術である蔓を出して石に絡み付けた。
すると先ほどまで勢いをつけていた石の力が弱まった。
「フン!さすが巫女を守る七星士。だが、お前たちに用はない。これはあの女が本当に巫女にふさわしいかどうか試験なんだ」
「試験…?」
やっとの思いで体を起こそうとしたその瞬間、さっきより大きい石、いや、岩が私に向かって飛んできた。
私は再び体が硬直して動けなくなった。
もうダメ!と思ったその時
瞬時に駆けつけてくれた婁宿が、私の目の前に立っていた。
「婁宿…?ダメよ、そこをよけて。でないと婁宿が…っ!」
私が真っ青な顔で言うと、婁宿はいつものやわらかな口調で言った。
「大丈夫だよ、鈴乃。鈴乃は僕が守るから」
(婁宿…)
岩は容赦なく迫ってくる。
絶体絶命と思われたその時

パァァァ・・・

私の身体全体から白い光を放った。
「こ、これは…!」
「白虎の光…」
婁宿、昴宿、そして少年も驚愕な顔をして私を見た。
私はなにがなんだか分からなかった。
白虎の光は巫女の証なのだという。
少年ー奎宿は七星士の一人で、私を巫女と認め、旅を共にすることになった。

『鈴乃は僕が守るから』
婁宿の言葉を聞いた瞬間、私は胸が高鳴った。
こんなこと今までなかったことだった。
あれから3日間、婁宿と目を合わす度に、ドキドキしてしまうようになった。
このことを昴宿に相談したら
『鈴乃は婁宿のことが好きなのよ。そっかー。初恋かぁ。可愛いvv』
と言って笑っていた。
私にとって初めての恋
それから私はさらに婁宿を意識するようになって、時々そっけない態度をとってしまうのだった。
婁宿はいつも優しくて、私を守ってくれる…。
でもそれは…。

「私が巫女だからだよね…」
「鈴乃」
昴宿はそっと私の隣に座った。
婁宿は私(巫女)を守る七星士。
私を守るのは使命で、他に感情があるわけではない。
どんなに好きでも届かないこと分かっているけど…。
でもー気づいたこの気持ちをもう止めることが出来ないーー。
恋がこんなに切ないものだなんて知らなかった。
私は膝に顔をうずめて、静かに涙を流した。

しばらくして
「鈴乃ー昴宿、そろそろ行くぞ!」
奎宿の元気な声がした。
「ごめんね昴宿。暗くしちゃって。行きましょ」
涙を拭って私は元気に駆け出した。
そんな鈴乃を昴宿は見守るようにして呟いた。
「使命なんかであんなに守んないよ。婁宿は」

再び歩き出した私達。
ここでも婁宿との距離を置いていた。
「今日も七星士は無理かな」
奎宿が呟いた。
気がつくと誰もいそうにない森の中。もうすぐ日が暮れる。
「仕方ない。宿を探すか」
婁宿がそう言った瞬間だった。

シュッ…
横から飛んできた矢が私の腕にかすった。
「何なの?これ…」
驚く私に婁宿が言った。
「多分、狩猟をやっているのだろう。ここは危ない」
婁宿がそう叫ぶと、私達はここを逃げることにした。
途中、私は婁宿に手を添えられた。
ドキッ…
胸の鼓動が速くなった。

「ここまでくれば安心だろう」
私達は走って、森を抜けて、民家がある村に来た。
森の中の物騒な気配はなくて安心感に包まれた。
「良かったぁ」
胸を撫で下ろすのも束の間、私はまだ婁宿と手を繋がれていることに気づいた。
だんだんと恥ずかしさがこみ上げてきて、瞬時に手を離した。
「鈴乃…?」
婁宿が驚いたように私を見たが、私は恥ずかしくて見ることが出来ない。
「鈴乃…最近僕のこと避けてないか?気にさわることしたか?」
あれだけ変な態度とっていれば、気づかれるはずだ。でもうまく言うことが出来ずに俯いていた。
すると、婁宿が私の腕を見て言った。
「さっきの傷、大丈夫か?」
いつもの優しい口調で言う婁宿。

婁宿はいつも優しい。気を遣ってくれるし、守ってくれる。
でもそれは七星士の使命なだけ。それ以外何もない。
私がどんなに好きでも届かない…。

「こんなかすり傷、なんともないわ」
「でも血が出てるし早く手当てしないと」
婁宿はそっと私の腕に触れようとした。

バシッ…

「小さな子供じゃないんだから一人で出来るわ!巫女だからってそこまでしなくていいよ!!」
私は婁宿の手を振り払って、大声で叫んでしまった。
「あの、ごめんなさ…」
「分かったよ。僕は鈴乃にとって、ただの迷惑だったみたいだね」

ズキン…

胸の中で強い衝撃が走った。
私が言動を恥し、謝ろうとしたのにはもう遅かった。
婁宿はさっきの優しい顔とは一変して、冷ややかな表情でそう言った。

こんなつもりじゃなかったのに…

後悔で胸を締めつけながら、先に歩いていく婁宿を私は顔を青ざめて見つめていた。

今日は近くの民家で泊ることにした。
着いてからも、夕食の時も婁宿と話すこともなかった。
夜、私は外へ出た。
夜風が冷たくて、多くの木々がゆらゆらと揺れていた。

婁宿…嫌われちゃったよね。優しくいってくれたのにあんな態度とってしまったんだもの。
でも時々思ってた。私って本当は迷惑なんじゃないかって。でも使命だから仕方なく守ってるんじゃないかって。そう思うととても切なくなって…。
こんな想いをするなら好きになるんじゃなかった。
私はしゃがみこんで、泣き出した。

その時

「鈴乃…?」
振り向くと、婁宿が立っていた。私は立ち上がった。
「鈴乃、泣いてるの…?」
「婁…宿」
婁宿が心配そうに私を見つめている。どうして…?あんなにひどいこと言ったのに…。
「婁宿…今日はひどいこと言ってごめんなさい。私、私…」
私は頬を染めて婁宿を見つめた。
「私、婁宿のことが好きなの…!いつも守ってくれて…でもそれは七星士の使命だから本当は重荷になってるんじゃないかって。だから私…」
私が言い終わらないうちに婁宿が近づいてきて、私を抱きしめた。
「僕も鈴乃のことが好きだよ」
「!」
婁宿の言葉に胸が高鳴った。
婁宿が…私を…好き?
婁宿の耳を疑うような言葉に、私はただ抱かれた婁宿の胸の中に頬を染めながら顔をうずめていた。
「命を賭けて守りたいと思うのは君だけだよ。決して使命なんかじゃない。僕には君が必要なんだよ。一人の女性として。でも最近鈴乃が僕を避けてたから不安だった。さっきも正直言ってショックだったけど、鈴乃が泣いてるのを見て放っておけなかったんだ」
「婁宿…」
私は婁宿を見上げた。そこにはいつもの私の大好きな婁宿がいた。
婁宿が指で私の涙を拭ってくれた。
私はかかとを上げて、ゆっくりと目を閉じた
そして私達は自然に抱き合って、唇を重ねた。

私の生まれて初めての大好きな人との口づけ

すっかりと出てきた満月が、二人のキスを見守っていた。


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こんなに長くなるとは思わなかった。
それにしても私ファンタジー向きじゃないですね〜。ラブ路線でいきます!(オリ小説なんで)
表現力ももっとお勉強したいと思います。もし宜しければアドバイスなど頂けると嬉しいです。
『巫女と七星士』いかがだったでしょうか?二人の立場から切ない鈴乃ちゃんを描いてみました。
ラストは念願?の両想いvvvv晴れて恋人同士です。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。


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