私は白い光に包まれて現実の世界に戻ってきた。 わかっていたはず 現実の世界に戻ってきて1週間後 街はクリスマスシーズンで賑わっている。 友達もクリスマスの予定など騒ぎ始めた。 今日は朝から雨が降っていたが、先ほどから太陽が顔を見せはじめた。 こんなときに一人で家にいるのはもったいない。 「外へ出かけてみようかな」 私は街へ出かけることにした。 少しもそんな気分ではなかったけれど・・・。 街は週末とクリスマス前いうことで多くの人達がいた。 友達同士でクリスマスプレゼントを何にしようかと賑わってる人もいれば、家族連れで買い物してる人も多い。 そんな賑わう街の中、私は一人きりでいた。 そして私の目の前に飛び込んできたのは、幸せそうな恋人たちだった。 腕を組んだり、はしゃぎあったり・・・ それを見て、私は切ない想いで、胸を締めつけられそうになった。 「婁宿…」 ふと、あの日を思い出す。 白虎召喚の日 『白虎よ。お願い!私をこの世界の人間にして!婁宿と共にずっと暮らしたいの…!!』 私は白虎に強く願った。 だが、白虎はその願いを叶えてはくれなかった。 そして私は、愛する人を、婁宿を残して、この世界に戻ってきた。 「どうして…」 私は足を止めて、周りを見渡した。 どうして街はこんなに明るいのに、自分はこう沈んでいるのだろう…。 本当なら幸せそうな恋人たちのように、私の隣にも婁宿がいるはずなのに…。笑いあっているはずなのに…。 『どんな時もずっと一緒にいてほしい』という私の願いはもう叶わない…。そばにいたくてどうしようもないのに…。 「婁宿…今すぐあなたの声が聞きたい…温かい胸の中に飛び込みたい…そばにいたいのにどうして…」 私は静かに涙を流した。 本当は分かっていた。 婁宿は本の中の人間。どんなに愛し合っても結ばれないこと。 でも止められなかった。 好きになればなっただけ苦しくなることくらい、わかっていたはずだったのに…。 涙がどんどん溢れてきた。 その時 ふと、婁宿と約束したことを思い出した。 『婁宿、離れてしまうけれど、私たちはどんなときも一緒よ…ずっと…』 『ああ。悲しい時も辛い時も…。心は一番近くにいるよ』 「婁宿…!」 私はハッとした。 きっとこんな切ない想いをしてるのは、自分だけじゃない、婁宿も同じ想いでいるのだと。 そしてきっと、お互い楽しい時も悲しい時も、離れてても分かち合えるって信じていけるってーー。 婁宿は本の中の人間だけど、私には分かっていた。 婁宿と出逢い、恋に落ちたこと。 深く愛し合ったこと。 全てが現実にあったことだってこと。 全てが私だけが知っている出来事ーー。 私は涙を拭って再び歩き出した。 『どんなときも心は一番ちかくにいるよ。そして、いつか必ず君を迎えにいくよ…』 数十年後 「婁宿…逢いたかった」 「鈴乃、これからはずっと一緒だよ。もう離したりしない」 鈴乃は肉体を捨てて、婁宿の胸へと飛び込んでいった。 婁宿はもう離しはしないと鈴乃を強く強く抱きしめた。 二人はどんなに逢えない時も、時空を越えて愛し続けた。 鈴乃は婁宿の言葉を信じてずっと待ち続けていた。 自分たちの見える真実を信じて…。 二人の長かった切ない恋が、今永遠の愛になった。 +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ これはですね、ふしぎ遊戯のOP「いとおしい人のために」を歌っていた佐藤朱美さんの「わかっていたはず」をモチーフに書いてみました。 この曲は婁鈴のためにある!みたいな。本当に切ないですよ。 えーっと、本の中から戻ってきた鈴乃ちゃん。もう隣には婁宿はいない。そんな鈴乃ちゃんの切ない恋心を描いてみました。 ラストはご存じの方もいらっしゃると思いますが、「決別の来同」を小説化しました。(ベタすぎなのでツッコまないでください 汗)同時に亡くなったシーンは、感動しました。是非ご覧になるときはハンカチのご用意を!3枚ぐらい(爆) |
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