Distance〜昴宿ver. 「何よ。なんか用?」 「別に」 特別なことのない。そんな昼下がり。 木の幹に寄りかかるように座る昴宿の横に、奎宿がストンと腰掛けてきた。 隣、といってもぴったりくっつくわけじゃない。 多分鈴乃くらいなら間に入るゆとりがあるんじゃないか。その位の微妙な距離間を置いている。 近くもなく、でも遠くもなく。 話しかけるのに近寄ったのか、話したくなくて離れているのかわからぬ、この微妙な距離間。 だから昴宿は『何か用?』と問うたのだ。 そして問われた彼は、『別に』と答えた後もずっと沈黙のままだった。 腹が立つ、イライラする、用がないなら何でここにいるのよ、どこぞの可愛い女の子でも探したら? 一瞬…そう、昴宿がそう思ったのはほんの一瞬。 「あっそ」 結局、昴宿は彼の目も見ずただ一言こう返すだけ。 彼女が意識しないうちに、いつしかその顔には笑みが浮かんでいた。 特別なことのない、こんな昼下がり。 あたしと、あんたと。 婁宿と鈴乃のように仲睦まじくおしゃべりするでもなく、ただ黙って同じ景色を見てる。 くっつくでも、離れるでもないこの距離で。 何でだろうね…悪い気分ではない。 「なあ」 「何?」 「お前、また一段と胸に肉ついたか?」 パコン。 握り拳が彼の頭に命中する。そうすることで距離がほんの少し縮まった。 「だから昼間っから何考えてんのよあんたはあっ!!」 「いてて…あー痛え。コブできたコブ。うちの優しい巫女様に慰めてもーらおうっと」 だけど、やっぱりくっつくことはない。また距離ができる。 自分に背を向け去っていく彼を、昴宿はため息混じりに見つめた。 あたしと、あんたと。 婁宿と鈴乃のように、素直な言葉を交わせない。ぴたりとくっつけない。 二人の間には、いつだってほんの少しの距離。 だからって、悪い気分じゃないんだけれど。 何でだろうね。 それが…ちょっぴり寂しいのは。 +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ 同盟に一時設置していたWeb拍手で、御礼画面用として置いていたSSです。 この二人は、この距離感があるからこそ。心地良いと思う反面、どこか寂しい。 白虎編ではそんな恋愛模様を見せてくれるといいな。 もう一つ、お師匠さん視点のお話もあります。よろしければそちらもどうぞ。 |
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