Distance〜奎宿ver. くっつくでも、離れるでもない。 不満なわけではないけれど、どこか物足りなさも感じる。 そんな、微妙な距離。 「何よ。なんか用?」 「別に」 奎宿が外に出てみると、大樹の幹に寄りかかるようにして、昴宿が座っていた。 声をかけるでもなく、人ひとり入る距離を置いて座ってみると、こんなことを言われる。 普通、ナンパであれば『まず声をかける』。 そうして『すかさず距離を縮め、肩を抱く』。 それを彼がこの女にしないのは、ナンパじゃないから。仲間だから。そうすることで拳が飛ぶから。 だからやらない…それは、彼女と彼の暗黙の了解。 だけど、本音はきっと他にある。 二人きりのこのシチュエーションで、彼女にすぐ声をかけられない、肩を抱けない…これ以上に距離を縮める行動を起こせない、その理由は。 「あっそ」 奎宿のそっけない答えに、昴宿はただ一言こう返してきた。 その時、ふっ…と彼女が笑った。気がした。 くっつくでも離れるでもないこの微妙な距離だから、はっきりとはわからないけれど。 オレと、お前と。 くっつくでも離れるでもないこの微妙な距離で隣り合って。 婁宿と鈴乃のように顔を見合わせるわけでもなく、その笑顔を横目で見る。 それはそれで悪い気分じゃないけれど… 何でだろうな。少し物足りないと思うのは。 もう少し側に寄れよ、ちょっとくらいこっちを見ろよ。そう思うのは。 「なあ」 「何?」 だが悲しいことに。 彼女が彼に触れるように、彼を見つめるように仕向けると、大抵彼女は笑っていない。 「お前、また一段と胸に肉ついたか?」 そう。大抵彼女は笑っていない。 それどころか、もれなく痛みと怒鳴り声がついてくる。 「だから昼間っから何考えてんのよあんたはあっ!!」 オレと、お前と。 くっつくでも離れるでもない微妙な距離を、いつしか心地よいと思うようになったこの旅。 だけど、何でだろうな。 『欲を言えば、オレの腕の中で、オレを見て笑って欲しい』 そんな冗談みたいなことを、ほんのかけらでも思う時があるのは。 +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ お師匠バージョン。 彼は好きな子にちょっかい出したがる小学生男子でしょうか^^; 一体彼はどんな顔して、どんな言葉で昴宿を口説いた…もとい、昴宿に求婚したんでしょうね。 この二人の初々しい恋人未満時代を、早く見てみたいです。 |
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