私はなんて惨めな人間だと思う。
大切な仲間を守れなかった…。
私のことを誰よりも認めてくれ、応援してくれた人をーー。
やっぱり私は巫女としてふさわしくない・・!!


揺れる想い・4
 


「昴宿ーーーっ!!」

倒れた昴宿を目の前に私はただ叫ぶ事しか出来なかった。
「昴宿っ!」
慌てて駆けつける婁宿達。
私はもう頭の中が真っ白な状態になった。


「だい、じょうぶ、だよこれくらい・・・」
途切れ途切れに昴宿の声がする。…大丈夫なの!? 
「す、昴宿!!」
「すでに、死んだみたいに、鈴乃が叫ぶから・・・・」
「だって!血を流してるし、倒れて」
「いきなり矢が肘に向かって飛んできて・・ビックリしちゃって・・・」
「昴宿…」
昴宿は顔をこわばらせてさっきのことを語った。
でも、私たちには「大丈夫だよ」と笑顔を向けた。弱音は誰にも見せたくない、昴宿はそういう女の子だ。
そんな昴宿を見て私は胸が痛かった。

「昴宿、大丈夫かー?」
「うん、大丈夫だよ。それに一人でも歩けるんだよ?」
「無理しないで!」

みんなで昴宿を抱えながら歩いて数時間、小さな宿を見つけた。
昴宿の傷の手当ても先程の私のハンカチで血をおさえたくらいしかしてないので、昴宿を部屋によく休ませて、私と奎宿でいい薬草があるという村へと出かけた。



「これかなぁ・・・」
私と奎宿は教えてもらった昴宿の傷にいい薬草を必死で探していた。
その時奎宿が声をかけた。
「あのさ、鈴乃…」
「んー…?」
「こ、このまんまでいいのかよ?本当に。」

・・・・・・・・

薬草を探す手が止まった。
「な、なんのことよ?」
「なんのことって婁宿のことに決まってんだろーが。一人で終わったなんて大間違いだからな!!」
私は奎宿をまっすぐ見た。
今さら何を言ってるの?

「…私と別れてください…」

私から別れを決めた。
私から別れを告げた…。
私たちの恋はもう終わった。

それなのに何故
こんなにも
胸が苦しいのー。


「私、護れなかった。昴宿のこと」
奎宿から目線をそらして、雲ひとつない青空を見上げながら言った。
「さっき、昴宿が何者かに襲われた時私、あの娘を護れなかったわ。だから矢に刺されてあんなひどい負傷を・・。」
「昴宿から聞いたけどよー『鈴乃はあたしを護ってくれた。これは鈴乃のせいじゃない。あたしが護りたかっただけよ』って言ってたぜ?それにひどいけがじゃなかったじゃねえかよ」
「・・・」

昴宿…。
優しくいってくれる顔が思い浮かぶ。
誰よりも応援してくれて、見守ってくれて、良き理解者の大切な親友ー。
私たちは巫女と七星士より強い絆というものがあった気がする。
でも、私はそんな大切な人を護れなかったんだーー。


「鈴乃…?」
奎宿が隣で青ざめている私を見た。
「やっぱり・・やっぱり私は巫女としても人間としても最低よーー!!」
大声で叫んだあとそのまましゃがみこんだ。
わからない。涙が溢れてくる。
奎宿はそんな私をただただ驚いて見つめていた。

「す、鈴乃・・そんな・・っ!」
「だってそうでしょう?私は昴宿を護らなきゃいけなかったのよ?それなのに立場が逆になって・・。私、全然巫女として使命を果たしてない。ふさわしくない・・・っ!」
小さく言って俯いた。
しばらくして奎宿があたりをうろうろしながら口を開いた。
「使命とかそういう関係じゃねぇよお前達の絆は。昴宿は自然にお前を必要として、お前は昴宿をって当たり前のことなんじゃねぇの。」
「奎宿・・・。」
「だからさっきみたいに危ない目にあった時だって自然に助けたい、護りたいと思ったから。鈴乃もだろ?」
「・・・うん」
奎宿の言うとおりだ。巫女としてじゃなく親友として昴宿を護りたかったの。昴宿は大切な人だからー。
でも・・・。
「それとお前は巫女として合格かな」
「・・・ふぇ・・・」
一瞬時が止まった気がした。
笑いながら言う奎宿ー。
巫女として合格ってどういうこと?それにどうして?
「鈴乃がいなかったらみんなまとまりがなかったと思う。鈴乃は優しい子だ。みんなの心をいつでも温めてくれる」
「でも、いつもみんなに迷惑かけているわ」
「そんなことみんな思ってないよ。あ、でも1コいけないとこあったな〜」
奎宿がしみじみと私の顔を見ながら言った。
「なぁに?」
「いきなり婁宿に別れ話をするところ」
「・・・・・」
「いいのか?確かにハッパかけたのは俺だけど一方的にって。。後悔してるんだろ?このままじゃ巫女としては合格だけど婁宿の恋人としては失格だぞ」
奎宿の言葉に再び胸がチクンとなった。
でも頭の中いろんなことで混乱してる。
私は・・・−。



「ただいまー!昴宿薬草とってきたよぅ」
暗くなり急いで薬草を探していたら、意外と私たちがいたところの近くにあって私と奎宿は顔を見合わせて笑い合った。
それから急いで昴宿の元へ戻ると・・・・昴宿は元気に夕食の準備をしていた。
あ、あれぇ。さっきのは違う人だったりするの?
「鈴乃ー手伝ってーー!!みんな「休んでろ」って言ってたんだけどそんな大怪我じゃないしちょっと横になって回復したら術使って治しちゃった!」

それがあったとは・・・・っ!!

ケロッとして言う昴宿に私も奎宿も目を丸くした。
「でもありがとう。でもねーこんなんで時間取ってる場合じゃないからね。」
昴宿が優しく苦笑いしながら言った。
「・・・昴宿、今日は本当にごめんなさい」
私は昴宿に頭を下げた。奎宿がああ言ってくれたけど私はあの時怯えてた昴宿を護りたかったの。それができなくて。一言言いたいことだった。
すると昴宿はさっきと変わらない笑顔でこう言った。
「あたしは鈴乃ちゃんにあやまられることひとつもないね!あたしがやりたくてしたことなんだから。」
「昴宿・・・」
私は奎宿を見た?奎宿は「だから言ったろ?」という顔をしていた。
「鈴乃は親友なんだから!」
「・・うん!ありがとう・・」
奎宿と昴宿の言葉が嬉しかった。いつもいつも迷惑ばかりかけてる私をあたたかく受け入れてくれて、私はなんて幸せなんだろうと思った。

そして急に昴宿が表情を厳しく変えて私にこう言った。
「でも、鈴乃アンタがあやんなきゃいけない人は一人いるよ。分かってるね?」
「・・はい」
これも奎宿と同じことだった。私はどれだけ婁宿を傷つけたか分かった。
身体のケガとかじゃなく、心の大きな深い傷・・・。



自分の考えがまとまった私は夜、宿の外に婁宿を呼び出した。



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まとまってないよ管理人!イチバン混乱してるのこの人かも。
今回は巫女としての葛藤を書いてみました。
昴宿との友情、奎宿との信頼関係。なんだかんだいって鈴乃を大切に想ってるんですよね。だから奎宿は心配であんなこといったわけですよね。
次で完結します!まだ考えてないけど・・(笑

お読みいただきありがとうございました!

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